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横浜市エコデザインワークショップ2009 第2回レポート No.1<概要>




日時:9月29日(火)14時から17時 場所:横浜市工業技術支援センターデザイン室5F
<参加者>
吉岡精工 加藤誠司さん、福田勝さん 以上2名 http://www.yoshioka.co.jp/company/
山田工業所 山田豊明さん、内田進久さん 以上2名 http://www.yamadanabe.com/
遊緑地設計 高橋寛和さん、伊藤雅広さん 以上2名 http://www.ne.jp/asahi/homepage/u-ryokty/
横浜市経済観光局ものづくり支援課 岩本大さん 横浜市経済観光局ものづくり支援課デザイン室 榎本まさひこさん
学生コーディネーター 小林英里、市民アドバイザー 水野貴美、市民アドバイザー 鈴木由美、メンバー 鈴木かな
デザイナー 荒木孝、デザイナー 鈴木一好

<概要>
企画を進めるにあたっての「考える」回として、次のことを行った。
1.「自分が選ぶ優れたエコデザイン」( 前回の宿題 )の発表を行った。
  企業から各2名、市民アドバイザー、メンバー、デザイナーの計9名の発表を行った。
2. アイデアを出す際の参考に、学生コーディネーター、市民アドバイザー、デザイナーから、
  「自分が選ぶ優れたエコデザイン」の話も含めて、それぞれの立場からの企画・開発のアドバイスを行った。
3.ブレーンストーミング:今回は時間の都合により、次回第3回に行うこととした。

<内容>
前回(第1回)は、Eco+Designの基礎知識講座として「3つのRと商品開発」「トリプルボトムライン」「環境配慮設計」さらに エコデザインでは、製品だけを対象とした狭義の概念だけでなく、社会・産業・製品/サービス・ライフスタイルまで含めた広義の概念で行う必要があるという話を行った。また、Eco+Designのヒント講座として「 製品だけを考えるのではなくモノ・コト・ヒト・シクミを対象とすること、またマーケティングの4P(製品・プロモーション・流通・価格)も意識すること、さらに対象とする人のセグメンテーションや企業・商品のポジショニングも検討しながら進めること、世の中の変化として「情報伝達環境の変化」「デザインやものづくりのしくみの変化」「生活者の行動の変化」を意識し、それに対応するには「ストーリー」が必要という話を行った。

その講義内容をもとに各自が「エコデザイン」をどう捉え、「エコデザイン」について考えてくるということを目的に「自分が選ぶ優れたエコデザイン」を宿題として出した。今回(第2回)は、企画への発想を広げる段階なので、発表は十分な時間を取り、発表者にはしっかりと話をしてもらい、それを聞くことによって「エコ+デザイン」に関する「気づき」を今後の企画の発想の巾を広げることに役立ててもらう。

宿題内容「自分が選ぶ優れたエコデザイン」
第1回の講義内容をもとに優れたエコデザインだと思うものを探してきてください。
分野、時代、地域は問いません。各自資料を用意して、次回発表します。資料は、写真・雑誌新聞の切り抜き、インターネットのウェブサイトのプリント、実物など自由です。ただし、なぜそれを選んだかの理由をはっきりさせておいてください。

1.「自分が選ぶ優れたエコデザイン」発表

(1)企業参加者の宿題発表
それそれ参加企業3社の現在の業務内容が背景にある発表であったがや自社のエコデザインに関する事業ドメインまでも視野に入れた密度の濃い内容であった。また、同じ会社の中でも社長・役職者と若手とでは視点が異なる部分も見え、今後の企画段階への布石を感じる発表であった。

(2)市民アドバイザー、メンバー、デザイナーの宿題発表
エコデザインの典型的な事例として、「コト」づくりをデザインで視覚化した商品、エコとデザインの関係を「シクミ」化した事例、さらにエコに関わるヒトの育成まで含めたビジネスモデルの例を紹介した。また、エコ関連のものでは、消費者の「機微に触れる」「共感をよぶ」ことも重要で特に若い消費者は、モノの本質を見極める傾向が強いから、エコに関しては「本物」「本気」を感じさせることが求められることの指摘もあった。

2. 学生コーディネーター、市民アドバイザー、デザイナーからのアドバイス
学生コーディネーター からは、学生のリサーチ・マーケティングの仕事を通して見える「意識」と「傾向」について、1.「エコデザイン」と「エコマインドデザイン」2.現在の若者の時代の潮流から、未来の「エコデザイン」を考える 3.総括して、未来型のエコデザインを考えることの3つのアドバイスがあった。市民アドバイザーからは、市民として視点から「応援したいもの」、助成金審査で感じた「エコ+α」、「市民の自発的な参加から生まれるブランド」や市民の「口コミでのプロモーション」の事例を通したアドバイスがあった。デザイナーからは、「ライフスタイルから生まれるエコ」としてスウェーデンの事例の紹介があった。
詳細は、「第2回報告書 No.2 デザイナー、アドバーザーからのエコデザイン開発に向けての提言」に記載しております。

3.ブレーンストーミング
今回の企業の方々、デザイナー、市民アドバイザー、学生コーディネーターの話を通しての「気づき」を 次回第3回のブレーンストーミング で各社の業務に関わる



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< デザイナー、アドバーザーからのエコデザイン開発に向けての提言 >



学生コーディネーター 小林英里
 学生コーディネーターの立場から、若い人の「エコ」意識についても含めて話を行った。

1)「エコデザイン」と「エコマインドデザイン」について
 ワークショップでの企画を考える作業に入る前に、自分なりに「エコデザイン」を改めて定義付けをしてみた。例として、ある視点から二つに分けてみることで、今後の商品開発のヒントを探ってもらいたいと思う。
「エコデザイン」
定義:環境に配慮した設計・計画をされたもの、であり、“地球視点”で仕組みの全体をとらえたものをさす。極論というと、“エネルギー”を節約する(仕組み、または自然的に生成する仕組み(=環境破壊の削減)。
例:工業工程の中でCo2を削減を実現、自然エネルギーの利用
ポイント:必ずしも、消費者の購入に結びつかない。というのも、工業過程など数値的なものは、消費者がエコを実感できないため、伝わりずらいのがマイナス要因。そのため、伝え方には工夫が必要。
「エコマインドデザイン」
定義:「購入者(消費者)がエコに貢献していることを実感できる」デザインのもの。「エコな私」「楽しくエコできる」など、“気分”(エコマインド)が共有できるデザイン。また、「もったいない」などの節約志向のエコ気分にも働きかける場合もある。
例:エコバックやマイはしなどの日常エコグッズ
ポイント:必ずしも、実際の環境活動に貢献しているとは言い切れない。かえってエネルギーを使っているのでないか?など疑問視される面もある。しかし、ユーザーの実感ができることは、最終的に消費者の購入につながる大切なポイント。
□「エコデザイン」と「エコマインドデザイン」の双方を取り入れた成功事例
いろはす(コカコーラ社.09年発売.飲料水)
「エコデザイン」要素
   ペットボトルに使うプラスチックをこれまでの40%削減
   飲み終わったら絞れるデザインにすることで、ゴミの量も極端に少なくなった
「エコマインドデザイン」要素
   CM効果により、「さわやかに環境貢献」のイメージ→イメージ的エコ
   絞れる=あたらしい、楽しい、絞ってみたい!と好奇心がわくデザイン→好奇心エコ
   通常より安い。520mlで定価130円(場所によっては100円)→経済的エコ
 ⇒結果:100日で1億本突破

提言:エコデザインとエコマインドデザインの両方をうまくバランスとることが、成功の秘訣と考える。

2)現在の若者の時代の潮流から、未来の「エコデザイン」を考える。
 「エコデザイン」は、“持続する”デザインであるともいえる。
これからボリューム層になっていく若年層の環境意識を知ることで、世代が変わっても商品力が“持続する”ものがつくれるのではないか。今の10代、20代は、「だまされたくない」「悪いことに関わりたくない」と思っている。それは、近年続いた企業の不祥事(再生紙偽装、食品偽装など)を繊細な時期(思春期、10代)に目の当たりにしたことが背景にあるだろう。
 京都議定書以来つづく環境ブームより、必然的に環境意識が高くなっているが、現在の大学生は、大きな自主主催の大型イベントなどの場合でも、「チャリティイベント」にする傾向がある。
 これからの若年層は「調和」を非常に大切にする⇒コミュニケーションが大切

提言: 今後のエコデザインの商品企画において気をつけるべきこと
   偽装、その場の取り繕いは長続きしない。かえってイメージダウン
   誠実な組み立てが必須
   自然環境だけでなく、人と人の調和も生まれるものを潜在的に求めている
   次の世代へ必然的に引き継がれるような仕組み


3)1)、2)を総括して、未来型のエコデザインを考える。 
□ NPO法人青森グリーンエネルギー 風力発電「わんず」
市民出資で風車を建設。そのため建設の過程を市民と一緒に楽しむことが出来た。
建設後も、「自分の協力した風車」として、子供たちや知り合いなどに話として引き継がれる。
⇒自然発生的に生まれる環境教育
風車を機軸にして新しい地域活性活動を模索
風力発電による、省エネルギー化、エネルギー生成実現

提言: 未来のエコデザインの商品企画のヒント
市民をカタチが出来る前に巻き込むことで、よりよいコミュニケーションが自然発生的に生まれる
⇒エココミュニケーション
エコデザインとエコマインドデザインを意識しながら、開発段階から他の立場の人を巻き込んでみることで、未来型のエコデザインを模索してみよう。

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市民アドバイザー 水野貴美
 活動する市民の視点から、実際に参加している活動を通しての事例を中心に企業の方々の今後の商品企画やプロモーションの参考になるような話を行った。

1)「横浜スカーフのスカーフリング」
 横浜に馴染みのあるスカーフに関連するものとして、実際に使用し愛着のあるスカーフリングを紹介した。
「小さくてシンプルなモノだが、長く使えそうなところがエコ」
エコには、「飽きない」「捨てない」という「 Reduce (リデュース) 」としての取り組み方がある。特にデザインは、「価値のデザイン」(よいデザインのモノは、愛着を持てて、結果的に永く使う)価値を作り出すことが出来る。
「横浜スカーフは、明治からの横浜の歴史や物語がある」
「地元企業のものを、地元で買うことがエコ」
文字どおり「地元で生産されたものを地元で買う」という方法は、「不特定多数」を対象にした商品を企画するよりも目的が明快になることで、企画しやすい。さらに都市・地域の時代的な背景を持った商品には、その商品だけではない「その都市・地域の歴史や物語」といった他の人に語れる(口コミが可能)な「ストーリー」がある。そうした都市・地域の文脈を企画に取り込む方法も考えられる。
特に「横浜」には、「語れるストーリー」が満載だ。

提言:シンプルなものでも長く使えそうなものはエコになる。(価値のデザイン→ Reduce)
地元で生産、消費(購入)されることを想定することも中小企業の商品開発方法の一つ。
口コミが可能な「ストーリー」は都市・地域の文脈を企画に取り込む方法もある。


2)「環境保全活動と福祉活動」
 環境保全活動助成金で応募してきた中に、竹炭を焼く事業があった。今回のエコデザインの企画に参考になりえるので、それを例として紹介した。
「横浜の竹林保全と、竹炭利用がエコ」
横浜の竹林保全と、竹炭利用がエコ。さらに、それを福祉作業所が仕分けし、商品として販売している。
エコに福祉という付加価値をつけた商品となった。

提言:エコ+福祉、エコ+ユニバーサルデザイン等、エコ以外の分野で注目または必要とされているモノやコ
トとを組合せる方法もある。
また、他の助成金等で評価があった事例は、開発やストーリーづくりの参考になる。


3)「新しいリンゴ」
 「ブラムリー」というリンゴのブランドづくりを市民・消費者が参加して行っている例を紹介した。
「ビジネス、生産地、ファンクラブ」
リンゴの1品種という話に収まらす、語れることが盛りだくさん。
<ビジネス>
新たな食文化の創出 「料理用りんご」という新しさ
酸味による食育
新商品の希少性
取り上げるメディアも多様。歴史と物語の魅力
「現代農業」・・・栽培
「ミセス」・・・家庭雑誌
「dancyu」・・・食
「スイーツ王国」・・・お菓子
「BISES」・・・園芸
他「カントリーライフ」、「カフェ湘南よみうり」など
<生産地>
まちおこし ブラムリーと共に町も有名に 他の村、街が注目
休耕農地の活用 高齢化にともない放棄された土地の活用
省力栽培  病害虫に強く、農薬の散布数減少 「見かけ」にこだわらない生産
新しい果物栽培への挑戦 他のクッキングフルーツの栽培開始
りんごの隙間期の出荷 8月下旬から9月上旬の超早生種
<ファンクラブ >
消費者の支持 リピーターが多い
歴史と物語の魅力 産地やお店との連携
アート 色や形は日本画家の絵ごころをくすぐる
イギリスとの交流
多分野の人たちとの交流

提言:様々な側面を消費者に見せることで、商品開発、販売に効果。
欲しいという気運を高めるシステムは、「ブログ」(しかも無料サービス)を利用している。それはファンがボランティアとして行っている。時間、場所を問わずに交流できる場を作り、口コミを集めて、ひとつの集団としての発信をしている。


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市民アドバイザー 鈴木由美
  一市民、一消費者、一エコピープルの視点から、文字通り「自分の感性で良いと選定」したものを紹介した。

1)「テラカードに関して」
 イタリアの建築家アレサンドロ・コロンボとパオラ・ガルブジロのアイディアで生まれたポストカード「テラカード」を紹介した。
「育てる楽しみを送る。 エコな気持ちと植物を育てる時間と喜びを共有する。デザインは それを素直に表現する。」
このテラカード(テラは地球・大地の伊語)は、ダンボール素材のカードに「植物の種」と圧縮した「培養土」が入っています。 受け取った人は、ポストカード表面のシールをはがし、小さなスプーンやスポイトを使ってそっと水をあげれば、1週間から15日ほどで発芽します。
このテラカードは、単純にモノをデザインしているのではなく、「エコに対する慈しみ」「植物を育てる時間や喜び」といった気持ちもデザインされた商品。

提言:モノを作るというより、どうやって、そのモノを通して「エコ」な気持ちを共有させられるかが、エコ+デザ
インの商品開発では必要。企画段階で「共感をよぶ」ストーリーを考える。 デザインは、 それを素直に表現する。


2)「風で織るタオル」
 愛媛県今治の池内タオル株式会社の「風で織るタオル」を紹介した。
「環境負荷を徹底的に減らす経営姿勢」
地場産業のタオルが中国ベトナムなどの廉価な商品に押され衰退、差別化を図るためにタオルの「風合い」の追求と「環境負荷」を徹底的に減らすという経営姿勢(さらに有機栽培綿を使用、染色なども化学物質の使用をさけるなど)を貫いた。「環境に配慮した経営方針」が評価され、商品がアメリカで最優秀賞を得る。さらに2002年に100%風力発電で稼働する企業となる。
「分かりやすく伝える工夫:ネーミングの上手さ」
企業が環境に負荷をかけない経営努力をしても、消費者の目には触れづらく、他社との差別化を図りづらい。その点、この会社は「風で織るタオル」という誰にでも分かり、「共感」を呼びやすいネーミングも成功の重要な要素になっている。

提言:徹底的な環境負荷を減らす経営努力がある上での、伝え方のデザイン(この場合、コトバのデザイン)が成功
の要因。


3)「エコレジバッグ」
 今はごく普通に使われるようになったエコバッグであるが、機能や切り口を追求していけば、まだ新規参入の可能性がある例として「エコレジバッグ」を紹介した。
「機能追求+デザインでエコな行動を喚起」
今回紹介したものは、スーパーのレジカゴにすっぽり入る「エコレジバッグ」。通常はレジでもらったレジ袋か自分で持参したエコバッグに詰め替える作業が生じるが、これは空のレジカゴにすっぽり入るので、レジでの詰め替えの手間がかからず楽である。さらにレジ袋の代金がお得で、しかも「ご協力ありがとうがざいました。」と言われる優越感も味わえる。
提言:今すでにある商品であっても、その機能を追求しデザインを良くすれば、まだまだ開発の余地がある。

3つの事例を通した提言
消費者も企業も「しなければ」という義務で「エコ」を考えるのではなく、消費者にとっては、「楽しいから」「お得だから」「楽だから」「カッコイイから」・・・、企業にとっては「純粋なビジネスの観点から」・・・
そうしたことの積み重ねで⇒ポディティブなスパイラルでグリーン消費が進んでいく。



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メンバー 鈴木かな
 TV番組と本を題材に「最近の何でもエコ」の風潮に対する若い人の気持ちを紹介した。

1)「 シエラレオネ共和国取材」 フジテレビ 2009年8月23日放送
 最も世界で貧しい国である同国の取材の番組であるが、よくある環境番組と違うのは、取材者の「本気度」。
これが、この番組に興味を持ったきっかけである。
2)「 エゴこそエコのはじまり: デザインと死より」 デザインと死 著者黒川雅之 出版ソシム株式会社 2009年5月28日
 これは著名なプロダクトデザイナーのデザインに関するエッセイであるが、その中の一節を紹介した。
 エコは社会意識がなければ実現しない。自分だけのことを考えている人にはその発想は生まれない。そう書くと「そうだよ、そうだよ!」という声が聞こえてくる。もちろん、そうなのだけれど、それでは本当にはエコは実現しない。・・・中略・・・ 社会を愛することって本当にできるのか・・・?人類を愛することってできるのか・・・?
僕はその考えに「眉唾だ」と言いたくなる。・・・中略・・・ エコも本当は一人ひとりの人の苦しみや辛さから始まらなくてはならない。自分が苦しむことになることを知ることから始めなくてはならない。エゴこそエコの始まりなのだ。自分や他の人という具体的な人をちゃんと見る教育や世の中づくりが必要なのだ。

提言:「偽善とエコ」 雰囲気で行っているエコには興味を持てない。偽善さえ感じる。消費者の機微に触れるか、
どうかが重要。一方、「本物・本気」に対しては大人が思っている以上に若者は敬意を持っている。


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デザイナー 荒木孝
  スウェーデン留学を題材にスウェーデンのライフスタイルや都市環境の紹介をした。

1)「 スウェーデンとの比較による日本の消費生活の見直しに関して」
 現在、世界では環境破壊も進み、経済の面でも停滞感を感じる様になり、日本ではこれまでの経済成長第一主義とは違う新たな価値観が求められている。
そこで、経済規模は日本の12分の1ほどにもかかわらずエコや福祉で知られ、人々が生き生きと生きるスウェーデンを一つの比較例として紹介し、当たり前だと思っていた日本の大量消費ライフスタイルを見直すことで持続可能な経済と環境の接点を探るヒントがそこにあると考えた。
そこから「多様なライフスタイル・自分の手で作り上げる暮らし方」という点を例にとり、今までの「一様なライフスタイル・買って済ます暮らし方」という流れから新たな方向への転換の手助けをする商品企画に一つの解があるとの見方を示した。

提言: 例えば、日本では休日にショッピングモールなどに買い物に出かけている人が多いが、それとはまた別の選択肢として公園などへの手軽なファミリーピクニックというエコな活動へ誘導する様な提案を行い、ショッピングのみならず今までなら家でゴロゴロしていた様な人もちょっと公園に出かけてのんびりする様な心の余裕を取り戻してもらう取り組みが考えられる。そしてそれに関連した準備に必要な道具や情報提供・企画などを行う事に商品としての可能性があると考える。


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デザイナー 鈴木一好
  エコをクリエイティブな取り組み(エコ+デザイン)で事業化した先駆的な事例で、様々なメディアにも紹介されているフィンランドのSECCO(セッコ)と日本のkurkku(クルック)を紹介した。

1)「SECCO(セッコ)」フィンランド
 SECCOは、 それまでIT企業などのビジネスコンサルタントをしていた創業者のニーナ・パルタネンにより、 2003年フィンランド中部の町ユヴァスキュラで生まれた。。
「 安定的な廃材の供給と、若く才能あるプロダクトデザイナーを結びつける」
創業者のニーナ・パルタネンは、以前から環境問題に危機感を募らせていたが、若手デザイナーが創るリサイクル素材を使ったデザインやアートに刺激を受け、「安定的な廃材の供給」と「若く才能あるプロダクトデザイナー」を結びつける「シクミ」を作り出したのがSECCOの原点であり、現在もそれをつづけている。
「 ハイクオリティ+機能性+できるだけ元の素材の形状や特徴を残す」
まず、デザイン的にはハイクオリティであり、機能的であること。さらにできるだけ元の素材の形状や特徴を残す。これがSECCOのデザインコンセプト。元の素材の形状や特徴を残すのは、製造工程でのエネルギーや材料を省くだけでなく、ユーザーが「廃材からできたものである」ことを理解しやすいようにしている。
「 Treasures of Wasteland 廃棄の山の宝物」
デザイン性も優れた宝物のようなプロダクトを作れば、 ゴミや工業廃棄物は宝の山になる。

提言:現在、廃材を利用した同様のデザインや会社はあるが、 SECCOは早くに企業化したフロントランナーである。
また SECCO自体が「廃材の供給」と「デザイナー」を結びつける「シクミ」である。


2)「kurkku(クルック)」日本
 kurkkuは「快適で環境にも良い未来へシフトしていくための消費や暮らしの在り方を考える」をコンセプトにレストラン、カフェとバーなどの飲食事業と生産や流通を考えた商品開発などを行っている。
「 気持ちよく、よく生きるを共鳴・共振、その実践の場」
日常でふと思うエコ意識「気持ちよく、よく生きる」を、共鳴・共振させて広げていこうという思いと活動を行う「実践の場」である。
「環境に関する様々なプロジェクトの推進と支援を行う非営利団体ap bankのプロデュース」
音楽プロデューサー小林武史、Mr.Childrenの櫻井和寿、坂本龍一氏を加えた3名が自己責任において拠出した資金をもとに2003年ap bankが設立された。ap bankの「ap」は「Artists' Power」、そして「Alternative Power」。
当初は環境問題に関する勉強会でしたが、専門家や識者を講師に迎えての勉強会を重ねるうち、自分たちのお金を環境や福祉など自分たちの望む目的にのみ生かしている「市民のためのバンク」の存在を知り、設立に至る。 kurkkuはそのap bankのプロデュースによる。

提言:問題意識を持った人が集まって知恵を出し合うことでカタチに。環境の専門家ではない「日常のエコ意識」を
視覚化、ビジネス化。


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海外メンバー 齊藤 真菜
 齊藤真菜が後日、オランダのロッテルダムにある「サステイナブルダンスクラブ」というコンセプトを掲げたWATT(ワット)というナイトクラブを紹介してくれた。
「ダンスフロアの振動で発電する」→「お客さんが楽しむことでエネルギーが生まれる、それも激しく踊れば踊るほど効果が出る」という、「真面目やトレンディなだけじゃなく、もっと違った見方で「エコ」に取り組めるんじゃないか」という指摘が新鮮だった。


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横浜市エコデザインワークショップ2009 第1回レポート No.3 <ワークショップの状況>



 最初にアイスブレイクとして参加者全員で人間マトリクスを行った。人間マトリクスは、タテ軸ヨコ軸を決めそれがどこに位置するかを表現するマトリクスの手法を実際の人を使って行うもの、今回、タテ軸は「勤務経験のある企業の規模」、ヨコ軸は「年齢」で行った。マトリクスの中心(タテ軸ヨコ軸の交差点)は、資本金1億従業員100以上の企業に勤務経験あり年齢30歳であったが、その中心付近はほぼ空白であった。これがこれからの企画内容に関係するか・・・

その後以下のプログラムを行った。

 宿題発表:「自分が選ぶ優れたエコデザイン」
 前回(第1回)に出席企業の皆さんにお願いしていた 「自分が選ぶ優れたエコデザイン」 について発表して頂いた。

遊緑地設計
高橋さんは「いろはす」「量り売りシステム」「里山」「服の交換会」「ミニ耕運機」などを挙げられた。どれも表層的なモノの話ではなく、シクミやコミュニケーションまで含んだ環境設計の専門家としての専門的な話が印象に残った。特に里山については、保全と資源活用という里山に生えている杉や竹の有効活用などを含めた里山との新しいつきあい方を提供することで、里山の再生や活用を促進し、さらに周辺住民の自然環境に対する意識改革にも繋げていけるのではないかという可能性を「環境設計の専門家」として提案して頂いた。
伊藤さんは「プリウス」「幌布製財布」「紙製携帯トイレ」「食後お皿を自分で綺麗にする習慣」などエコ+デザインの多角的な視点を披露された。スイスのチューリッヒに有るFREITAG(トラックの幌を再利用して作られているメッセンジャーバッグで有名なメーカー)の財布(伊藤さんが実際に使用されているもの)の実物を持参いただいた。トラックの幌としてヨーロッパで長年使われて来た布地が、その耐久性の高さと使い込まれて来たその風合いを活かし、財布やバッグに姿を変えるというFREITAGのコンセプトについても紹介して頂いた。

吉岡精工
加藤さんは「CO2 25%削減の記事」「ベルマークシステム」「量り売りシステム」「サーフィン」を挙げられた。国連気候変動首脳会合の鳩山総理大臣演説の余韻もあるこの時期のタイムリーな話題として、CO2 25%削減の話に関連する記事の紹介をしていただいた。 "実際にその削減をするなら家庭でガスコンロは使えなくなる" という様な内容に対して、その様に自分の生活をイメージする取り組みとしては評価が出来るという様なお話をされた。また「 ベルマークシステム」「量り売りシステム」などの「シクミ」に関わる話や「サーフィンでのボランティア活動」の話などモノ以外の関心も紹介していただいた。


福田さんはエンジニアらしく「プリウス」を例に挙げ、ガソリンエンジンと電気モータによるハイブリットはEVにつながる過渡的なシステムではあるが、その完成度は高く、EVにつながる技術も搭載されており次世代への橋渡しという意味でも意義のある物であるという技術的な解説を分かりやすく説明していただいた。 著名人などが乗っているというエコイメージの確立などの技術以外のマーケティングに関する話題にも触れられた。


山田工業所
山田さんは「チタン製中華鍋」「レアメタルより生ゴミに価値を見いだす世界もある」についてお話いただいた。チタン中華鍋を実際に使っているプロの方は熱まわりの良さによりガス代を1ヶ月あたり5,000円節約できたという実話を話され、「エコロジーとエコノミー」の両立という事を力説された。


内田さんは「形に魅力のあるストロー」「短い鉛筆活用アダプター」などを挙げ、ストローの場合には、一般的には使い終わったらすぐゴミになってしまう様なストローにちょっと工夫をして、例えばストローの中間部分をハート形にすることで新たな価値を与えると、単なる使い捨てという範疇から脱却させる事も出来るという事を示して頂いた。


考察
発表者皆さんの話を振返ると、技術の話、モノの話、表層的なデザインの話よりもエコへの取り組み方、 シクミづくり、 ビジネス化の方法、マーケティングにまで視野を広げていらしたのが良く分かり、それぞれが次回以降の企画のヒントになったのではないかと思います。